Idea4U interview vol.30

シニアマーケティングの本質を探る

超高齢化大国ニッポン!シニアビジネス「これから」の形

 


日本の社会が直面している超高齢化問題。厚生労働省の「人口動態統計」によると、65歳以上の高齢者数は、2025年に30%超えの予測です。諸外国に比べ、例のないスピードで進行する中で、シニアマーケットの存在感も増すばかり。そんな中、注目したのが、1903年(明治36年)創業、医療用ゴム製品からスタートした宇都宮製作株式会社です。いわゆる「100年企業」として社会の変化に細やかに対応し、医療、介護分野を含む幅広い事業展開を背景とした商品開発から、ツールとしてのカタログ制作へのこだわりまで、独自のビジネススタイルに定評があります。ストーリー性のある情報発信で、未来の日本を元気にする本質的な切り口を探ります。

全てはモノづくりから始まった『まもる』をつくる!アイデンティティ

創業当時、「くすりの町」として知られる大阪・道修町に店を構え、商品を買い求める客のリヤカーの行列ができるほどだったという。医療用ゴム製品に始まり、大正時代にはゴム製水枕の販売を開始した歴史が語るのは、医療用ゴム枕の締め金を開発した創業者の信念から続く、新しいモノをゼロからつくりだす確かな技術です。
現在は、メディカル、サニテーション、工業用品、量販、医療介護の5つの事業部で構成されています(図1参照)。うち、シニアマーケットとの関連で、メディカルと介護分野を合わせると、売り上げの約43%。介護単体では15%ほどで、ここを今後伸ばしていきたいとのことです。
宇都宮製作の名刺で、ロゴマーク横で存在感を放つ、『まもる』を製る!という力強い文字。これは、創業110年の節目にあたる2013年に生まれた、新たなスローガンであり、安全・清潔をまもる企業としての意思表明とも言えるもの(図2参照)。当然、今後の急速な高齢化への対処という意味においても介護分野での重要なファクターです。

 

シニアマーケットのとらえ方で可能性も大きく変わる!

「宇都宮製作は、平たく言えば、『まもる』を製る屋さんです」とやさしい眼差しで語る大西副社長。高齢者をビジネスターゲットとして見るだけの企業とは一線を画す風格があります。医療介護事業では、「高齢者が生き活きとした暮らしを送るための製品を開発し、商品を提供する」という目標に向かっており、メディカル事業では、感染管理に役立つ製品開発など、会社全体として『まもる』を製る屋さんとして胸を張っていける、というわけです。現在、医療介護分野でも「卸からメーカーへのシフト」が進行中。2025年の高齢者30%超えを前に、健康寿命を延ばすことに寄与する視点です。実績のある施設向けディスポーザブル製品と、新たに予防医療にも注力し、医療介護分野を充実させて、高齢者がイキイキとした社会の実現に貢献できる、というわけです。これまでの介護製品の発想は、「歩けないから杖を使う、体が動かないから電動ベッドを使う」等の不満足要因をどう解消するか。しかし今後は、「健康維持、あるいはよりおしゃれに見える」といった満足要因を満たす製品づくりの時代。介護される側も世代交代する中で生まれる新しいニーズを見逃さないことが、本当の意味で新たなシニアマーケット創出につながるのです。

 


 

モノづくりの新たなスタイルとアイデアから見えてくる未来

新たなスローガンができた2013年以降、製品企画のメンバーが営業に同行し、お客様から直接ヒアリングを行い、モノづくりや商材の選択、カタログづくりに反映する取り組みがスタートしました。一方で、大学や病院との共同開発にも積極的に取り組み、その代表例が、国立循環器病研究センター、工業デザイナーと共同開発した防曇アイガード「パラシールド」です。手術時に医療従事者の感染リスクが高いもののひとつが目。しかし、従来品は曇りやすい、装着感が悪い等の理由で着用しないことも。そこで、医療現場のニーズを形にしました。βチタン製フレームや、透明度が高く、防曇性能のあるフィルムなど素材にこだわり、ストレスなく使える仕様で、2015年グッドデザイン賞を受賞。また、110周年を機に、「ただのプロでは終わらない」という思い、プロフェッショナル、プロテクション、プロダクツ等の意味も込めてスタートしたPro+(プロプラス)ブランドで展開する「Pro+防菌ウェットワイパー」は、院内感染の問題にも対応できる、介護施設にも適した商品です。従来品は、拭いた瞬間は除菌ですが、乾いた後から来た菌は繁殖が可能。乾いてからも抗菌・抗ウイルス効果を発揮する「Pro+防菌ウェットワイパー」なら、施設の手すりなど1日に何回も拭く必要があった場所で、スタッフの負担を軽くできるメリットも大きいわけです。

 


 

高齢者に「生き活き」した暮らしを!時代に寄り添うカタログづくりがキー

商品を世の中に発信する、営業ツールであるカタログの中で、シニアという切り口で注目するのは、「健康・快適・介護・生活便利品図鑑」として発刊される「暮らし生き活き」です。商品事業部 企画Gの髙坂課長と喜多様は、カタログ作り最前線で、打合せを重ねる日々。「まずはテーマ設定から」と語るのは喜多様。その時々に適した、共感を得られるテーマが必要とのこと。表紙やイントロ等で毎回登場するイラストの生き活きファミリーも、元気でおしゃれな高齢者が増えたことを反映し、ヘアスタイルや服装を今風にするなど、細部にもこだわります。ユーザーの共感力を高めた上で、介護保険適用の専門性の高い商品だけでなく、使い方次第で役立つ一般向け便利グッズを提案するなど、エンドユーザーの手助けになる企画を盛り込みます。
「エンドユーザーにとって見やすくわかりやすいカタログにするには、我々と制作会社がお互いの専門分野を生かして、議論を重ねることが重要です」と語る髙坂課長。かつては、レイアウトの詳細まで原稿作成していたため、作業量が膨大で、制作スケジュールをも圧迫していました。これを大幅に改善し、制作の前段階からアウトソーシング的に任せるフローに変更してからは、本来やるべきことに集中できるようになったそうです。

 


 

大きな社会変化に対応する企業としての社会的意義

介護施設の人手不足の問題は、「勤めても続かない」というケースが大半。そこで、スタッフが日々使う消耗品の品質を上げることでも、何か変えることができないかと考えてみます。価格のみで消耗品を選んでしまうと、商品品質の問題や使いにくさなどから手間が増え、スタッフの作業負担増の一因にもなりかねません。そこで、高品質のものに変えると何が起きるか。介護する側の環境を整えることで離職率が下がり、ノウハウを持ったスタッフが定着し、介護施設として高評価になり経営も安定ということも起こり得るのです。「汎用品で解決できる現場改善」事例を示すことができれば、「宇都宮製作の商品で問題解決」ということも可能です。
また、一部商品に限っては海外進出も検討し、医療機器の品質保証の国際標準規格であるISO13485の取得準備など、より幅広い視点で動きはじめています。さらに、WEBサイトには感染を防ぐための「情報発信室」を設置したり、地元の東大阪の小学校で感染管理教室を開く活動等、『まもる』を製る!一環として、地域貢献、社会貢献を行っています。シニアマーケットを正しく読み解くには、その周辺環境を含め、俯瞰で眺めることで見える課題に寄り添うことが何より大切です。これからの社会の変化に対応するビジネス発想のヒントが、ここにありました。

 (不二印刷株式会社)

 

宇都宮製作株式会社についての詳細は、こちらでご覧いただけます。
http://www.u-seisaku.co.jp